霞沢岳と島々谷2013/06/06

上高地の南に、霞沢岳(2646m)という山があります。上高地というと穂高岳や槍ヶ岳がメインで、霞沢岳を目的に来る人は僅かです。
しかし霞沢岳から見る穂高岳は、また違ったおもむきが有り、一度は登ってみたいと思っていました。今回は島々谷下降も含め、2泊3日のテント山行でした。
平日の2泊3日のテント山行というと、先ず参加者は見つかりませんので、今回は単独行でした。
6日トレース - 紫
7日トレース - 赤
8日トレース - 青
トレース
【6日】
6:30島々谷駐車場所=7:22安曇支所バス停(路線バス)=8:40上高地-9:25明神-11:50徳本峠
標高差 706m 累積標高差 919m 距離 6,977m
今回は帰りの利便性を考えて、島々谷登山口にある駐車スペースに車を置きました。国道158号の安曇支所から島々谷に入ると直ぐに動物よけのネットがあります。
動物よけの柵
自分で開閉して、車で少し進むと10数台は停められる駐車スペースが有ります。
島々谷登山口の駐車場所
到着した時は4台ほど止まっていました。装備を整え安曇支所前のバス停に向かいました。少し早すぎたので、予定の路線バスまで30分ほど待ちました。
路線バスを待つ
ベンチに腰掛けていると、通学の男子高校生が2名「おはようございます」と挨拶して反対車線のバス停に歩いていきました。都会の高校生では考えられないことです。
定刻に上高地行きの路線バスに乗り(1850円)上高地に8時20分到着。天候は高曇りで穂高連峰も良く見えます。河童橋では高校生の修学旅行らしき団体が記念写真を撮っていて賑やかでした。
おきまりの河童橋からの穂高岳
河童橋から明神までは45分。
新緑の明神への道
途中、猿の群れが道の両側の木に登り食事中でした。
小猿は食事中
冬に明神へ来た時は一面雪におおわれ静寂の世界でしたが、今は新緑の季節、観光客や登山客が沢山行き来していました。
冬は真っ白だった明神館
明神から10分の白沢出会で徳沢への登山道と別れ、徳本峠(とくごうとうげ)の道に入ります。
沢に沿って登る道はニリン草の群生地で、道の両側に白い花が続いています。徐々に傾斜がきつくなり、所々雪渓が現れてきました。雪は軟らかく、キックステップで登れます。
峠付近の雪渓
ザックはテントや寝袋、炊事道具や食料で16kgあり、さすがにユックリしか歩けません。
徳本峠には12時前に到着。徳本峠小屋でテント設営の手続き(2日で1200円)をして、早速テントを張りました。
徳本峠小屋

我家
徳本峠の道は、釜トンネルが出来るまでは松本から上高地に入る唯一の道で、昔の登山者はみんな通ったところです。島々から長い道を歩き、最後の急登を登ると峠に出て、目の前に明神岳を中心に穂高連峰が姿を見せます。
峠からの穂高岳
私も何度かこの道を行き来しましたが、峠から見る穂高岳は格別です。徳本峠小屋には昔、何度か泊まりましたが、囲炉裏とランプの小屋で、小松さんという酒好きのおやじさんがタラの芽の天麩羅を出してくれたりして、懐かしい思い出がありますが、小松の親父さんも大分前に亡くなったと聞いてます。
小屋でビール(500mlで800円)と水(水場は無く1L200円)を購入。穂高を眺めながらビールを飲みました。
夕食は早めに済ませ(今夜のメニューはスキ焼丼とケンチン汁、ウイスキーとチーズ)明日に備えました。
今夜の食事です
暗くなる頃から雨がポツポツ降り出してきました。明日が雨だったら、停滞(行動しない)するか下山するかと考えながら寝てしまいました。
【7日】
5:18徳本峠-6:20ジャンクションピーク-8:50K1-9:13K2-9:32霞沢岳-10:23K1-12:57ジャンクションピーク-13:54徳本峠
標高差 536m 累積標高差 2,818m 距離 9,960m
朝は4時に起床。テントから出てみると昨日と同じ高曇りで、穂高もくっきり見えます。こうなると登行意欲も湧いてきて、早めに食事(朝は定番の餅入ラーメン)を済ませ、装備を整えて5時半前に出発しました。
峠からジャンクションピークへの道は、最初から残雪が出てきます。登山道は周りから一段低くなっているところが多く、雪が消えずに残っています。登るに従い徐々に残雪が増えてきて、ジャンクションピークの山頂付近は完全な雪原です。
ジャンクションピーク手前から穂高岳
このピークは山頂付近がなだらかで、登山道が雪に埋まっている為にルートファインディングが難しいところです。無雪期でも時々道迷いがあるとの事ですから、雪におおわれるとなおさらです。赤テープや木のマーキングを頼りに、踏み後を確認しながら慎重に進みました。
ジャンクションピークは一面の雪原
山頂付近で右に曲がり、しばらく雪原を下降すると、小ピークが連なるヤセ尾根になります。P1からP4まで登下行を繰り返し、いよいよK1の登りにかかります。
急斜面に雪が張り付き、濡れた草の斜面がミックスになっていたり、今にも崩れそうな砂礫の急斜面があったりと、なかなか手ごわい登りです。急登の手前で軽アイゼンを履きましたが、雪だけでなく、草の斜面や砂礫の斜面でもしっかり食い込むので安心です。
これでも道です
9時前にK1に到着。ここから見る穂高連峰や笠ガ岳の連なりは今までに見た事が無く新鮮です。雲はだいぶ出て来ていましたが、何とか全体を見ることができて良かったです。
K1より笠ガ岳(左)と穂高岳(右)

乗鞍岳方面

K2(右)の奥に霞沢岳(中)
K1から岩稜伝いにK2。
K2から霞沢岳

K2からK1とジャンクションピーク(右)
後の雪渓を登ると霞沢岳山頂に着きました。山頂は狭く、標識が地面のすぐ上に一枚有るばかりです。到着した時には、穂高は既に雲の中で、周囲の山も雲に巻かれ始めていました。
霞沢岳山頂

雲の乱舞
小休止の後、早々に下山に掛かりました。K1の下りは嫌だなと思っていましたが、それ程ではなく順調に進みました。途中で6名のパーティーが登って来るのと出会いました。今日始めて会った登山者です。
K1を下り、小ピークに掛かるころから雨が降り出しました。おまけに雷鳴も轟き、アラレも降ってくる悪天になってしまいました。この悪天はジャンクションピークを越えるまで続き、小型のサブザックを使った為、ザックカバーも無く、中の物がだいぶ濡れてしまいました。
雨対策は、手抜きするとひどい目にあいます。今回の教訓でした。
霧の中の雪稜
午後二時ごろに峠に戻りましたが、その時には雨も上がり、時々薄日も差し始めました。途中ですれ違ったパーティーは稜線で雷雨に会い、午後四時ごろ戻りましたが、ひどい経験だったと話しているのを耳にしました。
明日の天気予報は晴れるとの事。明日のテント撤収と帰りのことを考えると、たった2日山の中にいるだけなのにワクワクします。若い頃、長期の合宿で、下界に降りたらあれを食べよう、これを食べようなどとテントの中で話していたのを思い出しました。
「街にいれば山恋し、山にいれば街恋し」ですね。
【8日】
5:40徳本峠-6:20ちから水-7:40岩魚留小屋-9:53二俣-11:27駐車場所
標高差 1,344m 累積標高差 1,826m 距離 15,383m
夜は、服などが湿っていて寒くて時々目が覚めましたが、いつの間にか朝になりました。時計を見ると4時半になっています。定番の餅入ラーメンを食べ、テントの中を整理してからテント本体をたたみ、ザックをまとめました。
隣のテントの住人が、夜中は満天の星空で素晴らしかったと言っていましたが、残念ながら寝ていて気づきませんでした。穂高は霧の中で中腹まで見えるだけです。最後に穂高を見てから下山したかったのですが残念です。
5時半過ぎに出発。最初は九十九折の急坂で、所々残雪が残っています。下るに従い残雪は無くなり、40分ほどで水場の「ちから水」に到着。ここで水を補給しましたが、「ちから水」の看板に、ニリン草の花びらが付いていて「ちから氷」になっていました。
ちから水
このあたりの道は両側にニリン草が咲き乱れ、フラワーロードになっています。
道の両側はニリン草でいっぱい
「ちから水」からほどなく木橋を渡ると、島々谷の長い渓谷になります。
何回も沢を渡る丸木橋がありますが、昨日の雨に濡れて滑りやすく、下には雪解け水と昨日の雷雨で増水した激流が流れていて、へっぴり腰で慎重に渡りました。木の桟道も同じ様に濡れていて、アイゼンを履きたいくらいのツルツルの状態でした。
一番怖かった丸木橋
それでも岩魚留小屋まではコースタイム通りの2時間で到着。
岩魚留の滝
小屋は今は営業していませんが、岩魚釣りの人達が利用しているようです。
岩魚留小屋
岩魚留から二俣の林道までの道も渓谷の脇を辿る道で、所々崩壊した崖に無理やり道をつけた様な場所が多く、緊張の連続でした。
下流も廊下状の渓谷

渓谷の道
二俣からは林道ですが、周囲は新緑の森で、途中猿の集団の中を歩いたり、のんびりした道で気分は爽快です。しかし、ここまでの行程で足のあちこちが痛くなっていて、駐車場所に着くのが待ち遠しかったです。
11時半に車に到着。登山靴を脱いだのが最高の気分でした。さっそく車に装備を放り込み、島々から1キロほどの「竜島温泉 せせらぎの湯」(公営の日帰り温泉施設500円)で3日間の垢を落として帰宅しました。

さすがに3日間で距離32km、標高差2586mは老体にはきつかったです。しかしテントや食料を背負って山の中で生活するのは、本来の山登りに近いかたちだと思います。
疲労もありますが、充実感のほうが勝っています。

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